すべてが思い出になったあとで/はるな
 
弾くJerry Lee-Lewisだってことは、それからまたずっと先になってから知った。もうすっかり、music loversのメロディもなつかしくなってしまったあとで。すべてが思い出になったあとで。

しゃくなげの名まえを教えてくれた男の子も、借りてきたハイロウズのCDをいっしょに聞いてた男の子も、細かいところを、もう思い出せない。ただあの百合の横顔、それからジェリー・リー・ファントムの軽快なメロディ。

わたしがこわいのは、それらがもうすっかり穏やかな一枚のフィルムになってしまっていることだ。せつなさや、葛藤や、くやしさをぜんぶ通過した、穏やかな場所へ運ばれてしまったことだ。わたしはそ
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(3)