帰郷/aria28thmoon
ひとりで立っているのです。
みんなが行く地元の高校ではなく、東京にある美術の学校に進もうと思った、その気持ちを父も母も思いのほかあっさりと受け止めてくれました。
幼い頃から絵を描きつづけてきたわたしにとって、それはごく自然な希望であったことを認めてくれたのでした。
しかしそれを観月さんに告げたとき、彼のいつも透きとおっていた瞳に曇ったような影がさしたのを見て、わたしは心を揺らしました。
観月さんの『水たまり』に波が立つのを、このとき初めて見てしまったのでした。
あのときの気持ちというのは何と言い表せばよいのか、今もまだよくわからずにいます。
しかし観月さんは目を伏せなが
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