帰郷/aria28thmoon
ものようにアトリエへと出かけ、いつものように絵筆を走らせ、いつものように帰路につこうとしていたこのわたしに、観月さんは『恋』をしたのです。
彼は絵の道具を片付けていたわたしに、絵のモデルになってくれないだろうか、と言ってきました。
突然のことでしたので、すぐに返事が出来ずにいると、観月さんはお父さんには僕から電話で連絡をするから、と付け加えました。
わたしは驚きを隠せずにいたのですが、しかし彼のその、いつもよりもいくぶんゆっくりとした言葉の調子をひどくうつくしいと感じながら、こっくりとうなずきました。
そうすると彼はほんとうにうれしそうなかおをして、父に電話をかけるその声も、心なしか
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