帰郷/aria28thmoon
に彼が組み込まれており、彼のなかのおなじ4年間にはわたしという人間が組み込まれているというその事実だけは、確実に其処に存在しているのです。
彼は父の古くからの友人で、小さいながらもアトリエを構えているプロの画家でした。
ある日お絵かき遊びをしている幼いわたしを見ていた父が、お父さんのともだちに絵の先生がいるから、よかったら絵を習いに行ってみないかい、と言ってわたしをそのアトリエに連れて行ってくれたのです。
わたしは絵が好きでしたし、嫌がる理由もありませんでしたから、黙って父親のあとをついてゆきました。
それがもう、10年以上も昔の話です。
そうして絵を習い始めたわたしは、自分の絵
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