帰郷/aria28thmoon
 
の絵の先生を『せんせい』とは呼ばず、『観月さん』と苗字で呼んでおりました。彼にはどうも『せんせい』という言葉が当てはまらないように感じたからです。
 
わたしは観月さんから、『見る』ということを教わりました。
それはすぐにわたしを夢中にさせました。
思えばわたしは彼から絵の描き方などひとつも教わってはおらず、絵を描くときにはただ『見た』ものを目の前のキャンバスに描き写していただけのことでした。
観月さんはわたしがどんなものを描いても、それがわたしが『見た』ものに正直である限りは決して何も言いませんでしたが、不思議とそうではないときにはそうとわかってしまうようでした。

そんなとき彼は
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