白象のいた港(掌編小説)/そらの珊瑚
持つ白象。長い鼻で沖合いの船から、荷物をトロッコへ降ろす。
それが僕の役目。世界広しといえども、象が働く港はここくらいのものだろう。
昼前にはもうお腹がぺこぺこだ。
そろそろ、待ち人が現れるころ。
「新さーん、白象ちゃん、お昼持ってきたわよ」
砂埃の舞うじゃり道の向こうでお絹ちゃんが手を振っている。今年共に十五を数える二人は幼ななじみだった。
ぼくもにぎりめしをおすそ分けしてもらうんだ。今日は梅干しか。うへっ酸っぱいや。
僕らがにぎりめしにがっついている間、お絹ちゃんはいつもの小さな箱をたもとから取り出し、ぜんまいを巻いている。それから耳へ押し当てて、音を聴く
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)