サナトリウム(掌編小説)/そらの珊瑚
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「あなたも秘密警察に追われるかもしれない。お帰りの際は充分お気をつけあそばして」
「ははは。君は小説の読み過ぎじゃないのか。確か丸善にそんな檸檬を置いたやつがいたよなあ」
妖精のような君の笑い声はいつしか小さな咳となり、ひゅうひゅうと荒野を吹きぬける風を生んだ。
ここは新鮮な風が生まれるサナトリウムなんだろう!
新鮮な空気をくれるのではなかったのか!
僕は君の背中をさすりながら、名も知らぬレジスタンスとやらをを心の中で責めた。君の心の自由を勝ち取るためだったら、喜んで僕はその仲間になろう。
病室を去るときの儀式をするのが心底嫌で、同時にこれをするのは僕だけにしかで
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