冬の道/そらの珊瑚
袖の短い誰かからのお下がりの青いセーター
ヒダがすっかり無くなったよれたスカート
伸びて垢のつまった爪
何日も洗ってないベトベトの髪
小夜子ちゃんは
僕のことを
かわいそう、という
僕から言わせれば
小夜子ちゃんのほうが
かわいそうだ
お父さんの顔を知らない
小夜子ちゃんが生まれる前に
逃げてしまったから
水商売をしている
お母さんは
明け方帰ってきて
まだ酒臭い夢の中
客の枕代を
化繊のドレスの胸に押し込んだまま
小夜子ちゃんは
今朝も一人で菓子パンの袋を破る
クリスマスはクリームパン
正月はメロンパン
それでも
今朝は何パンかなと
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