ファースト・エンカウンター/板谷みきょう
 
と盗み見でもしているかの様な
卑屈な僕は、
彼女の指先がなぞった意識への関心を抱いたまま、
自虐的な自分を恥ずかしく思っていた。

その彼女には、笑うと立って居られなくなり、
歩けなくなる奇妙な性癖があった。
その性癖すら僕は心からあいらしく感じていた。
それで
その姿を見たいが為に、そして関心を惹く為だけに、
僕は道化者の仮面をいくつも持ち歩く様になったのだ。

僕の心はその頃から少しづつ、
僕自身も気付かぬうちに分裂し歪み始めていた。
いつしか僕にとって、
愛の究極は太宰だけとなっていった。

 僕は、あの頃に哀しくて切なく恋焦がれて泣いた。

一人よがり
[次のページ]
戻る   Point(1)