ファースト・エンカウンター/板谷みきょう
の間にか
グラスに付いていたしずくが流れ落ちて、
テーブルの上で小さな水溜りを作っていた。
彼女は伏せ目がちな物憂げさで、
脆い水溜りを指で壊し始め、
黒テーブルの上に
《ばか》と書き綴っていた。
何を考えているのか分からないまま、
僕は、気だるさを身にまとった彼女に
強く惹かれていた。
僕には、
やっぱり何を考えているのか分からない
その彼女と彼の間に、
目には見えない某かの強い結び付きを強く感じていた。
……彼と彼女の存在と
居心地の悪い、場違いな僕の後ろめたさ。
それなのに僕の視線はいつまでも、
彼女の指先から離れる事はなかった。
ちらちらと盗
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)