巡る/Akari Chika
た
ある冬
内側から滲み出る孤独感に胸を支配され
泣きながら自転車を走らせていると
甘い花の香りが鼻をくすぐった。
突然の出来事に涙は止まり
春の予感が私を慰めた
季節はいつも私たちの先を行き
それとなくタイムマシンを送り込んでくる。
未来からの手紙が届くタイミングは分からないけれど、
土の中の動きや
上空の様子
光の循環
など、
肉眼では確認できないところに秘密が隠されているのかもしれない。
桜が散る様子に浮つくのも
青々と茂る緑に微笑むのも
アーティスティックな紅葉に胸を躍らせるのも
白銀に心の明暗を重ねるのも
すべては人間の勝手だが、
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