イヴの罠/まーつん
 
のだ。世の恋人共を浮かれさせているクリスマスを、この手で葬り去るための。

 そう、白状しよう。やめさせたいのだ。耳にするたびに、スピーカーを銃撃したくなる、地元のさびれた商店街に、もの悲しく流れるクリスマス・ソングを。人気のないアーケードに白々しく飾られるモミの木や、派手好きの毛虫のようなモール、赤い靴下の飾りを。何よりも、ためらいもなくうっとりと互いを見つめ合うカップルのしぐさを。

 それができるのは、サンタ・クロース、お前しかいない。今年を限りに、こんなバカげた慈善事業から、わしは金輪際手を引くと、ローマ法王庁でも通して、公式に、世界中に宣言させるつもりだ。
 ゛毎晩食事の度に、
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