ボクのマスターベーション(3)/花形新次
 
客がやって来た。年配の男性だ。店の二人が「いらっしゃいませ。」と言うと、子供が同じように「いらっしゃいませ!」と大きな声で言った。それを聞いて、店の二人も母親も笑った。客の男性だけが、訳が分からず、キョトンとしているのが何となく分かった。
 店の男性は笑いながら、子供に向かって、「ありがとうね。」と言った。
 
 やり取りを聞いていて、僕には思わずグッと込み上げてくるものがあった。僕はタオルを顔にのせられていたけれど、涙が溢れそうだった。
 きっと僕の妻と息子も同じなんだと思った。いつも、拒絶されるのではないか、というような不安な気持ちを抱えていて、ビクビクしている。しかし、世の中はそんな
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