ボクのマスターベーション(3)/花形新次
だから同じ行きつけの店なのに、僕と息子が親子だということは、店の二人には知られていなかった。
僕は八時半の開店と同時に入り、一番乗りでやってもらうことになった。しばらく客は僕一人だった。僕は頭を触られると眠くなる性質なので、店に流れるキース・ジャレットのピアノを聞きながら、うつらうつらしていた。
男性に散髪してもらい、女性にひげを当たってもらっているとき、店のドアがカランコロンと鳴り、客が入って来た。僕は仰向けの状態で、見ることが出来なかったが、声で母親とその子供の二人連れだと分かった。そして、子供には、障害があることも分かった。常連なのだろう、店の二人のいらっしゃいの言葉がいつも
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