白い本/……とある蛙
 
が差し込む日、月の光にぼ〜っと浮かんだ本の表題は『東京オリンピック』だった。思わず手に取り本を広げるとそこには昔の代々木と渋谷の風景写真がコラージュのように勝手な向きに張り合わされ、脅迫文のように大きさも色も濃淡も違う活字がばらばらに印刷されている。薄れ行き意識の中でその内容を読み取ろうとするが、意識自体が不見当な夢のようだ。

 また、両目の間から光が入ってくる。光はかなり淡いもので内部を薄ぼんやりと照らしている。内部にはあの親父がいる。あのおばさんもいる。ショルダーバッグを肩にかけた自分がいる。窓の外には木造二階建ての校舎とアスファルト舗装された校庭と妙に姿勢の良い小柄な爺さんが掛け声をか
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