田村隆一論??フィクションの危険/葉leaf
 
は現実と一致していて真なのか、現実と反していて偽なのか。
 これについて、まず、(1)フィクションにおいて用いられている名前や記述は何も指示していない、とする説がある。次に、(2)作品中の文が偽であることがフィクションの特徴である、とする説がある。ここでは、(1)も(2)もフィクションの必要十分条件を主張している、ととらえるのではなく、何も指示しない名前や記述が多いほど、あるいは作品中の文が偽であることが多いほど、よりフィクション的である、ととらえておこう。というのも、通常我々がフィクションだと考える作品の中にも、実在する対象についての真なる記述が含まれていることは多くあるからだ。

針一本
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