アイロン、アイロン台としわのあるシャツ/はるな
 
な気持ちでシャツのしわを伸ばしたりするんだろうか?
あそこで―田舎のモーテルで、彼のためにアイロンを使おうなんてまったく考えつきもしなかった。アイロンとか、シャツとか、シャツのしわとか、そういうものは、夫のためのものなのだ。生活のためのものなのだ。そして、一般的には浮気と呼ばれるその行為のあいだ、同じ部屋に生活の匂いの居座る不自然さ。
でもその不自然さは、わたしに罪悪感を与えはしない。だって、夫はここにいないもの。わたしは、24時間夫といられるわけではないもの。365日まいにち、彼と会えるわけじゃないのと同じようなことだ。


致死量の幸福を舐めてしまったのだ、と思うようになった。

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