アイロン、アイロン台としわのあるシャツ/はるな
す母。そして、アイロン台。いつでもぴんと張られた、あの、うす緑色の布。手触りまで覚えている。静かで、いつもつめたくも温かくもなかった。
でもいまになって思うのは、しわのあるアイロン台などないのだ。そして誰も―誰ひとりとして―アイロン台にアイロンをかけようという人もいない。
それは何かに似ている。この世のなかの多くのものごとに似ている。
夫はわたしの体を作った。わたしはわたしの体を使う。
わたしはそのモーテル―田舎のモーテル、広くて、安い―のアイロン台を、使ったことがない。あんな場所でいったい誰がアイロンをかけるんだろう?どこかの夫婦が、昼間のキッチンにいるみたいな気
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