ロマネスクの果て/済谷川蛍
 

 5年前、高野山大学に入学したとき僕は既に病んでいた。そのとき僕は24歳で、それまではニートだった。入学間もない頃、僕は友人を得るため、一人の男子学生に目を付けた。その学生は、いかにも高校を卒業したばかりの初々しさがあった。メガネをかけていて、春休みに母親と一緒に購入したかのようなジャケットを着ていた。他の新入生達の見た目が散々なのに対して、そのメガネの少年は遥かにマシで、純朴そうだった。まだ新入生同士がお互いに警戒しあってる中、僕はいかにも気がありげにメガネの隣の席を狙って座り続けた。そしてあまりにも大胆に彼の横顔を観察した。メガネのほうは最初は気が付かないふりをしていたが、警戒心の強い時期を
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