さよならパリ??高塚謙太郎とボードレール/葉leaf
息において、一斉に鳴き始める。
(『さよならニッポン』「サマータイム」)
ボードレールが「彼女」の行為を想像するとき、その想像は「無からの創造」に近い。ボードレールの想像力はしばらく虚無をさまよった上で、宮廷服を纏ったりするイメージをつかみ取ってくるのである。同じく高塚も、「いずれから望まれ暮れていくか」という蝉と関係の薄い詩行を虚無からつかみ取ってくる。
だが、両者ともさまよう場所は同じ虚無であったとしても、さまよっている際の心理状態は異なっている。また、詩行をつかみ取った後、それを手放す際の心理状態も異なっている。ボードレールは希望に満ちたさまよ
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