さよならパリ??高塚謙太郎とボードレール/葉leaf
してドロテが愛情に値する存在であること、この二つを他者に伝えるためには、ただ「ドロテ」と書くだけでは足りず、「ドロテの純粋な存在」以外のさまざまな事物による修飾という迂路を辿らなければならない。ボードレールの愛情は、まず無量の愛情が詰まった「ドロテ」という言葉のみに始まる。その愛情を他者に伝えるため、「豊かな腰」「細りした胴体」「絹の上衣」という「ドロテの純粋な存在」以外の事物を用いなければいけない。ここで愛情は拡散する。つまり、ドロテに対する愛情が、その腰や胴体や上衣に乗り移って拡散してしまう。だが、一見拡散してしまったかのように見える愛情が、今度は弁証法的に「ドロテの純粋な存在」に集約され、「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)