どれもすべてたったひとつの生/ホロウ・シカエルボク
 
いびつで巨大な塊になる。たったひとつしかそこにはないのに、それに名前をつけるとすれば異物と呼ぶ以外にない、そんな塊。隙間だらけの窓に被せたカーテンが揺れている。秋が突然失速して冬がフライングしてくる。皮剥ぎを連想させる寒さ、それが皮膚の下数ミリまで食い込み始める。冬の夜明けはカタコンベを連想させる。自殺死体ばかりが詰め込まれたカタコンベを。生命の尊さを本気で語るなら、無為に死んで見せるのが一番だ、そう思う。街路に散乱した投身自殺死体がそこに立ち止まるものに思わせるもののことを考えてみればいい。そこには最も自覚的な生というやつがあるだろう。長く息を吐いてみる。身体の中が空になるくらい、執拗に、長く。
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