御伽話その4〜平凡〜/永乃ゆち
生きてきてら
二十年も経っていたというだけの事だ。
誰だってやってる。特別なことじゃない。
つまり僕は、もう一度言うけど、平凡な男なのだ。
そしてそれを、ずっと求め続けている。
何もなくて良い。特別なことなんか。
『普通』である『幸福』。
妻と知り合って、身に染みている。
妻は。
心を病んでいる。
もう十年くらいになるか。
出会った時にはすでに精神科に通っていて
腕や手首にはいくつもの傷跡があった。
でも妻は元気だった。
元々が明るい性格なんじゃないかな。
僕の前では可笑しなことを言って、よく笑わせられた。
朝昼晩、寝る前。定
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