御伽話その1〜くるみ割り人形の恋〜/永乃ゆち
 

ただ、傾いて、コーヒーミルに
寄り掛かっているだけです。
奥さんは、ただ黙って林檎を煮ていました。
泣きながら。
泣きながら。


**


恋心恋心
揺れるなら風散るのなら花
恋心恋心
舞うのなら雨沈むなら涙
揺れて笑って
そして散りゆく


**



「まぁ、良いじゃねぇか、シャラン。
俺はこんなだが、雨の冷たさも知らねぇが。
まぁ、憧れたって良いじゃねぇか。
知らないから、知りたくもなるってもんさ。
なぁ、シャラン。
俺は・・・。
まぁ、いいや。」

それっきり、くるみ割り人形が
口を閉じてしまったので
そう関心もなかっ
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