文学の夜/MOJO
 
方がないような気もする。何にせよ、アキちゃんは笑っていた。大事になることはないと分かっていたのだろう。
 しばらくして、俺たちは店を出た。小雨が降っていた。終電にはまだ間がある。四人のコテハンたちは靖国通り沿いにあるネットカフェに吸い込まれるように入っていった。個室は空きがなく、俺たち四人はオープンブースに並んで座る。その頃の俺は、酔って文芸板に書き込みすることを日課としていた。俺は、気に食わない「名無し」を「ネットゾンビ!」と罵倒する書き込みを繰り返した。書き込みながら、さっきの出来事を反芻してみる。文学云々は別として、やはりワタルが悪い。酒乱とは迷惑で哀しいものである、との結論に帰結した。
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