文学の夜/MOJO
 

 終電の時間が迫って、俺たちはネットカフェを出た。雨は本降りになっていた。傘を持っている者は誰もいない。懐に余裕があるコテハンはタクシーを停めて乗り込んだ。JRで帰るコテハンは南口を目指して小走りになった。コテハンHは、JRで帰るはずだが、なぜか駅とは反対方向に向かって走り出した。俺は走る後姿に「今日は、すまなかったなあー」と、大声で謝った。コテハンHは、「気にしてませんから」と答えて走り去った。この雨の中、いったいどこへ行くつもりなのだろう。
 小田急で帰る俺は、ずぶ濡れになりながら、西口に向かい、最終の各駅停車で帰路についた。金曜日の最終は超満員で、車中、コテハンHの行方を心配するゆとりはなかった。
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