/鯉
。陳腐な話ではあれど、思えば麻痺しているのかもしれない。低頭しながら受け取って礼を述べていると、三木はああ、とひとり思い出したようだった。
「あれね。ああ、あったなあ」
ニュース番組で交通事故のニュースが流れる。道路工事の音が響く。隣から洗濯機の音が蠢く。空は晴れていて、雲が散らされているが、陽はベランダから三人の顔を照らしている。
「じゃあこれで全部溜まったんだ。よかったじゃん、とりあえず落ち着けて」
「まあ、よかったと言えばそうだ」
あれなんかあるぞ、と話題が尽きて退屈そうな佐々木が文机を指した。恵美子が乱雑に重ねたであろう本の隙間に、彼女のものらしいピアスが落ちていた。
「お
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