猫の森であいましょう/済谷川蛍
 
の酒だってそんなゲスな試みに一役買っている。何より許せなかったのは、Nの前で流した涙にさえ、薄汚い思惑が含まれているということだ。抑えきれない感情さえ不実に冒されている。こういった人間に対する陳腐な嫌気を感じ、はめを外したくなってグラスの酒を一気に飲みほした。さっきまでの憂愁はどこに行ったんだ? 既に波は引き、人格は入れ替わっていた。
 「なんだか吹っ切れた」
 「お酒は色々忘れさせてくれるからね」
 「いや、あのカップルの喧嘩見たから…」そう言って思わず噴き出すと、彼女も笑い崩れて僕の腕を軽く叩いた。こういったふとしたことへの笑いこそ人間の中でも純粋に思われる部分ではないだろうか。
 「
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