君の手のひらに触れようとしても、怒らないで欲しい/ブライアン
 
り替えられている。昨日のキャッチコピーが、今が攻め時だ、だったのに、今日は、守りに徹しろ、になっている。目の前の女性は眠りの中で、それらの変化を無視する術を手に入れたのだろう。だが、ずっと立ちっぱなし。つり革にすらつかめない人だっている。だから、音楽で守ってやる。さあ、イヤフォンを耳に当てろ。肌の表面一枚に強固な壁を作るのだ。
 コンコン、扉をたたいているのは誰だい?大丈夫、大丈夫と繰り返してる。本当は大丈夫じゃなかった?耳にはめ込んだ音楽の壁が厚すぎる。コンコンとたたく誰かの手が誰の手だか分からない。助けを呼ぶ声を無視して、渋谷駅に着く。車内のドアが開く。人の流れが一気にホームへ出る。すぐさま
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