君の手のひらに触れようとしても、怒らないで欲しい/ブライアン
さましゃがみ込む女性がいた。すぐ後ろにいた女性だった。彼女は、大丈夫、大丈夫、と繰り返している。駅員が駆け寄り、腕をつかんでベンチへ運んだ。ホームを歩く人々は、歩きながら、その光景を眺めた。
イヤフォンを耳から外す。
出張先で大学時代によく聞いていた曲を聴いていた。あのころからずいぶん変わった。よいことも、悪いことも含めて。勝ち誇らないで耳に届けてくれ、やあ、久しぶりだね、と。音楽は武器じゃない。鎧でもない。恥ずかしそうに、君を守りたかっただけさ、と音楽は言う。誰だってそうさ、友人は助けたいもの。
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