君の手のひらに触れようとしても、怒らないで欲しい/ブライアン
 
ームへ出た。電車の扉が閉まる。窓からは駅のホームを歩く人々の群れが見える。その中に、さっき降りた男はいた。階段を降りようとしていた。
 
 2、3年前にずっと聞いていた曲は、iphoneの中で飽和状態だった。イヤフォンから聞こえてくる歌はうるさいだけのように思えた。本を閉じ、目を瞑り、つり革に体重をかける。かばんの奥にしまいこんだイヤフォンを取り出し、iphoneにつなぐ。聞き覚えのある声が聞こえる。ごきげんよう、と歌が言っている。君には歌が必要だろう?と勝ち誇った声だ。そうさ、必要に決まっているじゃないか。でも、あまりに消費が激しすぎるのだ。昨日見たはずの看板は取り外され、赤から黄色に塗り替
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