君の手のひらに触れようとしても、怒らないで欲しい/ブライアン
 
もくと出ていた。煙はすぐに雲の一部になった。青い空に吸い込まれる。小さな黒い点に見えるのはたカラスだろう。自由気ままに黒い点は動いていた。カラスの唯一の目的は、どうやらこの電車から遠のくことらしい。小さな点はますます小さくなり、目では見えなくなった。

 電車が駅に止まる。目の前に座った女性は駅の名前の書かれた看板を見つけ、ほっとした様子だった。隣の男が、すいません、と言って、混雑した車内を掻き分ける。すいません降ります、と男はもう一度大きな声を出した。車内の人ごみは声のほうを振り向き、精一杯道を作ろうとしたが、電車に乗ろうとする人ごみと混ざり合い、うまくいかない。男は無理やり人ごみからホーム
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