聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
、電子音が悲鳴のような音を上げ、原型を留めなくなっても叩きつつけた。彼女が体中に充満させていた暴力衝動を全て発散させ終わるとやっと鉄パイプで奏でる金属音は鳴り止んだ。少女は膝に手をついて荒々しく呼吸を吐き、やげて落ち着くと振り返って街を眺めて言った。
「ねえ、あたしって狂ってるっしょ?」
空っぽになった腹の中から今度は乾いた可笑しさが湧いてきて少女の大きく開いた口から際限なく出て行った。海沿いの街は夕焼けが美しかった。少女がこの街で愛していたのはそれだけだった。少女はトランクに鉄パイプを直してカギをかけ、通学カバンを持って家へ帰った。
「つまらねえこたぁいいんだよっ、ごちゃごちゃ言
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