リュウグウノツカイ/済谷川蛍
 
数人の男性が畳の上にあがって粗野な口調で談笑を始めた。どうやら顔馴染みのトラックの運転手らしい。本を鞄へ入れようかと迷っていると石鹸の匂いを漂わせた中年女性たちがやってきて金子みすゞの詩集を手に取りどうたらこうたらと立ち話を始めた。私は今すぐこの場にいる人間を爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばしたい気持ちだった。らちがあかないので自分の本を棚に押し込み、あとで回収することにして鞄を持ってその場をあとにした。しばらくゲームセンターで遊んだ。
 携帯を開いて時間を確認すると15時を過ぎた頃だった。休憩所に本を回収しに行く途中、腰まで髪を伸ばした小学4〜5年生くらいの女の子が、男湯ののれんをくぐっていくのが見
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