リュウグウノツカイ/済谷川蛍
性が私の顔を覗いていた。男性の顔は少しも笑ってなく、迷惑な客として扱われたことで胸糞悪くなり、このホテルのことが嫌になった。近くにいた中年女性も無遠慮に冷たい表情で私の顔を見ており、田舎臭さに辟易した。このホテルの人間で唯一素敵だった少女の姿を求めて、人が一番多く集まる宴会場へ向かった。子供も少なからずいたが、あの少女の姿はなかった。会場の前にはいかにも場末のホテルらしくステージがあり、客がカラオケを披露していた。私は少女を追いかけ回すのは止めにして、メニューを見てノンアルコールビールとつまみを頼んだ。会場を見渡すと、みな不景気とは思えないような明るい表情で、どこか懐かしく、子供の頃見ていた風景が
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