リュウグウノツカイ/済谷川蛍
のない野球中継を見た。私はこうして時間を稼いでいる間にも少女が上がってしまわないか心配だった。5分くらい過ぎた頃、外から「パパー、もう上がるんー?」という声が響き「私も上がるー」という言葉を聞いたとき、私は決然と立ち上がりサウナを飛び出して少女を追って浴場を出た。少女が身体を曲げて髪を床に垂らし、タオルで身体を拭いているのを見たとき、私はまさしく竜宮城の宝石を探り当てた。身体を洗わずに浴場を出たことなど、どうでもよかった。身体を伸ばした少女の乙姫のような姿を見たとき、このホテルに寄り道をして本当に良かったと思った。少女が服を着て長い髪をドライヤーで乾かしているのを横目で見ながら浴場を出た。何台も並
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