ある家族/さすらいのまーつん
手ごわかった
背丈を追い越し 見下ろすようになった今も
この年老いた看守に 勝ったとはいえない
なぜなら俺は今でも 彼を恐れているから
そして傷跡だけが 残った
憎しみとは 癌のようなものだ
俺は最初 嬉々としてその黒い薔薇を 胸の奥にある 暗い庭園に育てていた
それがどれほど危険なことかなんて まるで分かっちゃいなかった
心を強くしてくれると 信じていたんだ
だがそれは結局のところ 無力な自分についた 惨めな嘘でしかなかった
憎しみは俺の心を 逞しくはしなかった 引き裂いただけだ
後悔しても 後の祭りさ
友情をはねつけ 孤独を求めて
笑ってるときでさえ 悲しかった
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