ある家族/さすらいのまーつん
しかった
親父はいつも不機嫌な熊のように 家の中をうろついていた
そう、火山のような男だった
俺と姉貴は、そのふもとに暮らす 脅えたヘンゼルとグレーテル
いつも空想の森の中に 二人して手を取り合って 迷い込んでいったっけ
たとえ道しるべは残していかなくても
最後は何とか現実の世界に 帰ってきたもんさ
なにしろ お袋は 馬車馬のように働いていたし
借金は 山のようにあった
わがままは 言えなかったんだ
ニルヴァーナの歌詞じゃないが 彼女の心もある意味では
毎晩少しずつ 死んでいったのではないだろうか
俺は憎むことを知った
まだ一桁の歳だった
だが親父は あまりにも手ご
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