野良猫あるいはルンペン(全)/……とある蛙
けだ。
あのビットの上でオレは月に向って小声で一吠えした。オレはもうミルクなんぞ呑んでいないぞ。
あの岬の突端の草ッ原で、オレは何が飲めたのか、
一本の松の拉げた老木は松脂しか無く押し黙り、草は海風で花もなく、いつも不安定な曇り空! ―
北の海は暗いだけで、オレがひょこひょこ歩いているのをずる賢い鴉がじっと狙って眺めていやがる。オレは母猫の腹に縋り付こうとしたが、母猫はそのうちどこぞへ消えていった。
何やら、やせ細ってふらふらしながら。
何を飲めたのか? 何もノミはしない。
突然雨が礫となって吹き上げてきた。
泣きながら、オレは空を見ていたが ― 飲めなかった。
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