秘密。/ときこ
たかは覚えていない。
しかし、彼女の口から出た“結婚”という言葉に、妙に近いような遠いような不思議な感覚に陥ったのは覚えている。
「私はしたいなぁ…、やっぱり女の子に生まれたからには。素敵な人と結婚して、白いドレス着て、きれいなお嫁さんになるの。可愛い子供たちと毎日庭のブランコで遊びたいなぁ」
庭にブランコなんてどれだけ広い敷地の家に住むつもりだ?と思いつつも、目をキラキラさせてそう話す彼女から僕は目が離せなかった。
時々ケンカもしたけれど、彼女と一緒にいられないと胸がキュウっと痛む。
一緒にいても、彼女の表情が変わる度に僕の胸は傷んだ。
ああ、僕は
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