遺書にはならない足跡/セグメント
 
泣き、怒り、何とかして元に戻そうと苦心したのだ。
 だが、結論から言えば、それは徒労に終わった。最終的に、母は母ではなかったし、弟は弟ではなかった。父は栃木県にあるらしい、癌治療専門の病院に転院して、ほどなく他界した。
 私は、父と暮らす約束をしていた。母と離婚した父と、私はこっそりと連絡を取り、会い、会話をした。思えば、あの時、私は幸せの一歩手前くらいに立っていたのかもしれない。父と一緒の家で暮らせれば、私はやっと幸福になれると信じていただろう。これも、当時を思い返せば、きっとあの頃の私はこう思っていたであろうという推測に他ならないが。
 私は両親に愛され、弟にも愛されたはずだ。たとえそれ
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