遺書にはならない足跡/セグメント
勉強をしたい、静かに小説を書きたい。だが、おそらくそれは不可能だろう。また、何も私は生活音の範疇のもの全てが我慢出来ないというわけではない。多少は仕方のないことなのだ、人間がそこに住む限り。現に私は、以前、ここまで過敏になってはいなかった。こんなにも静寂を求めてはいなかった。無意識下で理解し受け入れていたのだ、人が住む以上、音は生じるものだと。
だが、聴覚も神経も過敏になってしまった今、私は必要以上の、出来得るなら最大限の静けさを求めてしまっている。街行く人々の話し声、駅前の喧騒、エンター・キーを強く叩く音、癇(かん)に障るような高くうるさい講師の声、音という音のほとんどに私はどこかで引っ掛か
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