遺書にはならない足跡/セグメント
 
る。ただの我儘なのだろうか。だが、昼間は工事、夜は上階を警戒し、隣室からの深夜二時のテレビの音を気にする生活というものは長期に渡って繰り返されると本当に神経を病むということが良く分かった。特に半年以上を耐えた上階に関しては。
 だからと言って死ぬという選択は、些か短絡的に過ぎるだろうか。死ぬという言葉を安易に用いることは決していいことではないと分かっているつもりだが、それ以外に、あの時の心情を言い表すに相応しい言葉が見付からない。
 先日の雨の日に橋に立っていた時は、あと一歩のところだったのだ。誰かが心情的に背中を押してくれたなら、そのまま舞い散っていただろう。人身事故が如何に他人に迷惑を掛け
[次のページ]
戻る   Point(0)