遺書にはならない足跡/セグメント
の把握をし続けないと、私が私でなくなってしまうのかもしれないという恐れを抱いている。近頃では、薬のおかげか、あるいは人格の柔和化によってか、少々、その恐怖というものは安らいだが。
前記した、恋人を失うかもしれないというのはこのことだ。恋人と付き合っているのは私だ。紛れもなく私だ。私しかいないんだ。私が恋人に告白し、お互いに好きだと認め、水族館に行ったり、私の家に遊びに来て貰ったりしている。
だが、ある日、私は非常に恐ろしくなった。明日は私が私ではないかもしれないという恐怖だ。眠って起きたら、私が私ではなくなっているかもしれないという恐怖。私は眠ることは勿論、普段の日常生活全般にまで恐怖を感
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