蝉は二度死ぬ/はるな
 
続くどこかで蝉が羽化しているのか。わたしの知らない場所で。わたしの生きている時間のうちに。
丸みを帯びてぬめる、乳白色。あれは何かに似ている。人間の生まれるさまによく似ている。はねを広げ、青みがかって皺のよった羽がみるみる透き通りぱりっとしていくのも、青ざめた赤ん坊がはじめての呼吸を経て血の色を得る過程によく似ている。
しかし蝉はすでに産まれているのだ。土のなかに。太った虫として七年間生きて、もう一度産まれるのか。交尾?鳴くために。

神秘、ではあるのかもしれないけれど、そのぬめりはわたしに不快感を与える。そうして、思うのは、背が割れ、蝉が抜け出すその躍動、伸びちぢみと、まるい外見に似たも
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