蝉は二度死ぬ/はるな
たもうひとつのものだ。それがあたえる不快感と、それでも見てしまう好奇心も。
生命のかたちはみな似通っている。こらえがたく不快でありながら、目をそらせないそのことは、わたしが死ぬまで生きていくことと似ている。
羽を乾かし、透明さを振り払った成虫が飛び立ったあとには、あめ色の抜け殻が残る。それはたとえば、爪や髪の毛のようなものなのだろうか。蝉にとっては。わたしには、それは、死骸にしかみえない。匂いもない、重さもない、腐ることもない、からからに渇いた死骸。
一度目の生を脱ぎ去ったあとに蝉は鳴き、そして、夏の終わりにもう一度死ぬ。
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