野良猫その4/……とある蛙
(猫)
おれが歩き始めた港町
鴎が去って、鴉だけがうようよいる
古臭い歌しか唄わない詩人たちが
古臭いことこそ正しいことだと
言わんばかりにおれたちの居場所で寛いでいやがる。
横柄な態度や失語症患者のような言葉には慣れたが、
どうにもこうにもあの薄汚い形(なり)には何とかならないものかと
漁師たちは活発に水揚げ作業をこなし、
おれたちに数匹の鰯の分け前を与え
そして、
しょぼくれた奴らには目もくれず
快活に笑いながら、
十分肥えた愛する女房たちの待つ丘の上の家に帰る。
奴らの詭弁など彼らの耳には聞こえないばかりでなく
奴らの風体など目もくれな
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