きりん/salco
が鈍麻する。それは目を開き耳で聞きながら同時に心では塞ごうとして
来た為の、神経の病的肥厚だ。
子に注ぐ愛情では、その頭に植えつけられた人間性への深い猜疑と侮蔑を
癒すことはできない。感応力の欠損、又は大脳域の痛覚に欠陥を来した子供
は、既に無邪気ではない。つまり父の子煩悩は、殆ど無駄な善行だったと言
うことができる。
かほどに生母のようであった人を爾来、子は誰も愛さない。いなくても良
い生物学的父親に成り下がった彼の人は無論、この世にはとうにないのだ
が、ジャングルジムのてっぺんから上気した顔で世界制覇を宣言する幼い娘
の前からさえ、こうして忽然と消えてしまうのだ。
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