きりん/salco
 
なおさずジ
キル氏とハイドの自己矛盾、或いは自家撞着に他ならなかった。
 社会生活と家庭生活は、帰宅の道のりほどに隔絶したものだ。またそうあ
るべきで、だから父は無能者であってもプロレタリア気取りのお調子者であ
っても良かった。それがヤクザであろうと人殺しであろうと、子供は親の社
会的位階など問いはしない。ごくたまにそれを垣間見てみじめな気持になる
にせよ、心を刺すのは肉親としての哀憐だけだ。また父が我々子供達に暴君
であっても構わなかった。しかしその母親に手を上げては絶対にならなかっ
たのだ。

 諍いの只中で、或いは一方的な暴力の行使を見て育った子は、ある種の感
受性が鈍
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