きりん/salco
 
民の反動とて戦後はスポイルされた共産主義者に成り果てたにせよ、
その虚妄的な反体制志向が実は生来の軽薄さに由来するものであったにせ
よ、彼が子を溺愛し女房を殴る生活無能者であった事とは何ら関係がないの
だ。わりなき男女の割れ鍋に閉じ蓋、惚れた腫れたの切れ難さが繰り広げる
レクリエーションを、子は肯えない。


 家庭生活という人生の慣習をイメージする時、TVコマーシャルにも似た
既成概念の一方で、私達きょうだいは毎日毎日見て暮らし体の芯に染みつい
た諍いの挟間にいつも立っている。それは例えば私を膝に乗せ、「○○ちゃ
ん、ワガマガ言うんじゃないのよ」と穏やかに諭す父の、とりもなお
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